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ある、雨の日。 湿った土の匂いが、鼻につく。 空から雫が、落ちてくる。 そんな日の、午後。 今日は6月×日、日曜日。 家には誰もいないから、私は散歩に出かけた。 裸足にサンダル。 冷たい水が、足を冷やしてくれる。 ピチャッ ピチャッ 誰もいない歩道を一人、歩いていく。 「……」 ズシリ 「……?」 お気に入りの傘が、急に重くなった。 近くにあったバスの待合所。 そこに入る。 傘を、下ろしてみた。 ドサッ 子供が落ちてきた。 私の、膝ぐらいまでしかない、小さな小さな子供。 男の子だろうか。 目が、気持ち悪い。 異様にでかくて、 充血していて、 焦点が定まっていない。 右の眼球は右の方を見ていて、左の眼球は左の方を見ている。 「君だれ?」 「……」 視点が、こちらを見た。 今度は、しっかりと定まっている。 じっと、私のことを見つめた。 沈黙が、続いた。 その均衡を破ったのは、あちら。 突然、その子供は歩き出す。 ペタペタ 靴を、履いていなかった。 ついてこいと、いうことだろうか。 子供の背中に、私はついていった。 連れていかれた。 ここは、近所の公園。 そこに、子供は入っていった。 するすると、木に登る子供。 『パパの木』 皆からそう言われている、一際大きな木。 大好きな、木。 登ることなら、私にもできる。 葉で覆い繁っている木。 子供を、見失った。 なんだか、眠くなった。 ひと休みしよう。 木に包まれながら、私は眠る。
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