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ある日の、真夜中。 暗い部屋。 テスト勉強をしている私。 唯一明るいのは、デスクライト。 寝静まった世界。 カリカリカリ 部屋の中に響くのは、シャーペンの走る音。 そんな時。 「う…わ……」 煌々と光る灯りに誘われてきたのは、大きな蛾。 大きな大きな、 目玉のような模様の、気持ちの悪い蛾。 確かに網戸は閉めたはずなのに、どこから入ってきたのだろう。 殺さなきゃ とっさにティッシュを掴み、机の上で休んでいる蛾を握り潰した。 ――昔から、虫は好きだ。 特に、解剖をするのが、好きだった。 そいつの死体を眺めたい気もしたが、今はそれどころではない。 ごみ箱に、投げ入れた。 空っぽの、ごみ箱に。 ベチャッ 空っぽの、ごみ箱に。 捨てた、はずなのに。 そんな音はあり得ない、はずなのに。 確かに聞こえた。 ごみ箱を覗く。 赤黒い血が、溜まっていた。 底の方、1cmほど。 じゃあ手は? もちろん手も、赤く染まっていた。 急いで洗面所へと走る。 水で洗った。 けれど、それが落ちることはなかった。 血は、既に染み付いていたから。 皮膚の中へ、潜り込んでいた。 取れるはずがなかった。 「あ………」 血の痣は、どんどん広がっていた。 どんどん、どんどん。 私の中を、侵食する。 もう、どうしようもなかった。 手足が痺れ、動くことが出来なくて。 声も出ない。 パタッ パタッ これは、涙だろうか。 その滴さえ、もう赤い。 思考も、働かなくなってきた。 目の前が、赤く染まっていった。
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