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翌朝。
普段通り、学校へ行く。
いつもの世界。
何も変わらない。
ならば何故そこに、もう一人私がいる?
いつもの学校、いつもの教室、いつもの騒がしさの中に、
私が、二人。
まさかね。
私は、もう一人の私に、話しかけようとして…
突然、もう一人の私が走り出した。
当然私も追いかける。
「……っ、待ってよ!」
学校の裏に着いたとき、その子はようやく立ち止まった。
「ねぇ、あなた、誰?」
「それはこっちの台詞」
怪しい笑みを浮かべながら、その子は言う。
「馬鹿だね、もう一人の私。でも、ありがとう」
「何の事よ。」
――そうだね。可哀想なあなたには、特別に教えてあげる。
どうせあなたは、死んじゃうんだもん。
目の前が、フェードアウトする。
頭の中に、声が鳴り響く。
自分の、声。
――ここは、あなたの住んでいる世界とは違う世界。
鏡の国、とでも言うのかな。
でもあなたの世界と私の世界は違う。
だって、あなたの世界には、生け贄なんてないでしょう?
生け贄。
イケニエ。
神様に捧げなければいけない物。
今夜は私の、生け贄の日。
私は今日、死ぬ予定だった。
でも、あなたが死んでくれるなら。
私、まだ死にたくないんだ。
どうぞ、私の代わりに死んでください。
心配しないで。
私はあなたの元いた世界で、幸せに生きていくから。
あなたの世界で、問題は起きない。
ただあなたが、こちらの世界で消えるだけ。
あぁ、やっと、この世界から解放される。
あなたが来てくれたから、私はあちらの世界に行ける。
ありがとう、もう一人の私。
さようなら。
あの日の夜、あの鏡に触れたときから、私は鏡の奥へ入ってしまっていた。
あなたはここに、来ては行けなかったのに。
あたしはここに、来ては行けなかったんだ。
カエリタイヨ。
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