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タンス
最近妹が、変なことを言う。
『ねぇお姉ちゃん。あそこのタンスの奥に、黒いウサギがいるよ』
そんなことあるわけないじゃん。
例のタンスを覗いたって、ウサギなんかいやしなかった。
なのにいつも、妹は言う。
「ねぇ、お姉ちゃん。あそこのタンスの奥に、黒いウサギがいるよ」
「ねぇ、あんたいい加減にしてよ。あのタンスにはないもいないでしょ!?」
「だって、いるもん」
私はタンスの扉を、乱暴に開け放つ。
「ほらいないじゃん!」
「イルヨ?」
「だからどこにさ!?」
そう言ってあたしは、タンスの奥に手を突っ込む。
「ホラ、ソコニイル。今、お姉ちゃんの手の前に、イル。」
「…え?」
「あ、今、口を開けてる。お姉ちゃんの手、タベテル。ムシャムシャ、パクパク。」
あたしは咄嗟に、自分の手をタンスから抜く。
あたしの、右手が、手首が、消えていた。
そして突如襲ってくる、尋常ではないほどの痛み。
「ぎゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
あたしの右腕が、どんどん消えていく。
喰われていく。
「ウサギさんだけずるいよ。アタシも、パクパクモグモグ、グチャグチャしたいな。おなかすいちゃった。」
手首から、大量の血。
吹き出した血が、妹もに降りかかる。
その血を、妹は舐めた。
「お姉ちゃんの血、すっごい美味しいんだぁ」
妹が、あたしに、近づいてくる。
「イタダキマス」
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