蜘蛛

1/1
前へ
/14ページ
次へ

蜘蛛

「ごめんなざいおがあざん」 私は泣き叫ぶ。 いつも、悪いのは私なんだ。 お母さんは悪くない。 私が悪い子。 私は悪い子。 「立て」 お母さんは、冷たい声でそう言った。 あぁ、また今日も、あの部屋に入れられるんだ。 お仕置き部屋。 真っ暗で気味の悪いあの部屋。 私は大嫌い。 ガララッ 立て付けの悪い扉を、お母さんは力を入れて開けた。 そして私を、いつものように、無言で置いていく。 そう、思っていた。 しかし今日は違った。 「ちゃんと、反省しなさい」 その言葉を残して、お母さんは去っていった。 扉はもう鍵が閉められていて開かない。 殴られた頬が、ズキズキと痛んだ。 何時間経っただろう。 しばらくしてから、いつもはしんとしているはずのこの部屋に、何か物音が聞こえた。 「?」 目を凝らして、暗闇を見つめる。 そこには 化け物がいた。 巨大な蜘蛛。 私と同じくらいの背丈。 その蜘蛛は、ゆっくりと私に近づいてきた。 みるみる暗闇から姿が現れる。 体毛の生えた、黒っぽい体。 たくさんの目。 たくさんの脚。 どこを取っても気持ち悪い。 「…う゛え」 びちゃっ 私は吐いた。 蜘蛛は毒を吐いた。 私に。 私の顔に。 ジュッ 「あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁああああ」 痛い。 顔が、焼けている。 溶けていく。 私は毒蜘蛛に、喰われるのかな… ふと顔を上げると、何故か蜘蛛は居なかった。 代わりにいたのは、お母さん。 「あれ…お母さん…?」 「なんて醜い顔なの?」 お母さんは、笑っている。 嘲笑している。 「これで、お母さんより美しくないね」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加