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遊園地のアリス
――パパママ、遊園地いこぉ
ある日私は、パパとママにそう言った。
とある日曜日のことだった。
「もちろんだ」
パパは言った。
「もちろんよ」
ママは言った。
私は二人に、仲良くなって欲しかったから。
もとの二人に戻って欲しかった。
そこは、初めて行く遊園地だった。
「なんて名前の遊園地だっけ?」
パパに聞く。
「さぁ、忘れてしまったよ」
日曜日だというのに、他の客はいなかった。
気味が悪い。
「ねぇ、やっぱり帰ろう?」
ママに言う。
「せっかく来たから、遊びましょう」
私は、パパとママと、手を繋いだ。
「ここ?」
やって来たのは、観覧車でもジェットコースターでもない。
『アリスの迷路』と言うところらしい。
「楽しいの?」
「きっと楽しいわ」
「楽しいよ」
まぁ、パパとママがそういうのなら…
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!新アドベンチャーの巨大迷路だよー!内装までこだわりまくり!絶対楽しいよぉ!」
ウサギの着ぐるみが、客寄せよをしている。
客なんて、誰もいないのに。
「おっ、そこのお客さん寄ってきまっか?」
高いテンションのまま、私達に話し掛けてきた。
「はい」
「ではこちらにサインをお願いします!」
ウサギの着ぐるみは小さめの紙を三枚取りだした。
遊園地に来てサインをしなくてはいけないのか…
完全に怪しい。
けれどパパとママは迷いもせずにサインをする。
まるで、操られているみたいだった。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
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