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「本当に助かったよ。なんてお礼を言ったらいいかもわからない。……けど、言うべきことは言っておくよ。ありがとう」
「んふふ、どーいたしまして」
彼女もどこか嬉しげで、足取りが軽快だった。
「それにしても、残念だったね。結局、お父さんのことはよくわからないままで」
「ああ……」
あの後、オフィスルームに残されていた岸上の荷物を調べてみた。しかし、岸上が冬吾に伝えようとしていたこと――千裕の死について何かわかりそうなものは残されていなかったのだ。
千裕の死の真相は岸上の頭の中だけにあって、そのまま永遠に葬り去られてしまったのだろうか……。
知りたかった。四年前の秋、尊敬する父が殺されたあの日に、いったい何があったのか……なんとしても、知りたかった。
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