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「ふむ」彼女は冬吾を観察するようにしげしげと眺めて言う。「背が高いな」
「はぁ、どうも」
「学生か?」
「……ええ。そう、ですけど」
初対面の人間から年齢相応に見られることは冬吾にとって珍しい。なので冬吾は内心彼女の評価を少し上げた。
「今年から大学生です」
平日なので今日も講義があったが、自主休講だ。
「いい時期だ。大切に過ごしたまえ」
「ええっと……」
困惑する冬吾を見て彼女は笑う。
「そう不審がるな。――名乗るのが遅れた。私は神村(かみむら)という者だ。君と会う約束をしていた岸上豪斗の代理でここへ来た」
「岸上さんの代理? あなたが?」
「申し訳ないな。急なことなのだが彼は今、用事でどうしても手が離せない状態でね」
「……そうですか」
落ち着いたように言いながら、冬吾は腹を立てていた。もとはといえば、冬吾を呼び出したのは岸上のほうなのだ。
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