第一章――――二つの出会い

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 四年前の秋の日、千裕の遺体はこの街のとある裏通りで発見された。刃物で胸と腹を複数回刺され死亡しており、見るも無惨な状態だったという。  犯行時刻は深夜と推測された。目撃者もおらず、死の真相は未だに明らかになっていない。通り魔の犯行のようにも思われたが、千裕が担当していた何らかの事件の関係者からの報復ではないかとも考えられた。  四年もの間、警察ですら掴むことのできなかった事件の真相を、どうして岸上は知っているのだろうか? それに、どうして今さら? そもそも、岸上豪斗とはどんな人物なのだろうか?  疑問は尽きない。急な誘いではあったが、その疑問の答えを確かめるためにも、冬吾は岸上から指定された待ち合わせ場所であるこの喫茶店へとやって来たのだった。しかし、代理の人間が来ているとはいえ、本人がいなければ意味が無い。
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