第一章――――二つの出会い

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「ふふ……。そうか、そう見えたか。では、そういうことにしておいてもらおう」  面白がるようにそう言うと彼女は席を立つ。それでその話は終わりのようだった。質問を受け付けたからにはきちんと答えてほしいものだ。 「コーヒーの一杯でもおごってやりたいところだが、生憎、岸上からなるべく急ぐようにとのお達しだ。すまないな」  神村は席を立ちつつ言う。 「気にしないでください。というか、俺コーヒー苦手なんで」 「そうか。……ちなみに、なぜ苦手なんだ?」 「……苦いからです」  神村が肩をすくませ笑う。 「笑わないでくださいよ」 「いや、すまない。馬鹿にしたつもりはないのだが……。苦味というのは本来毒のシグナルで、動物が危険を感じる味だそうだ。そういう考え方でみれば、君は危険に敏感だとも言える。悪いことではないさ」  そうだろうか。ただ単純に子供舌というだけだと思う。
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