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「ふふ……。そうか、そう見えたか。では、そういうことにしておいてもらおう」
面白がるようにそう言うと彼女は席を立つ。それでその話は終わりのようだった。質問を受け付けたからにはきちんと答えてほしいものだ。
「コーヒーの一杯でもおごってやりたいところだが、生憎、岸上からなるべく急ぐようにとのお達しだ。すまないな」
神村は席を立ちつつ言う。
「気にしないでください。というか、俺コーヒー苦手なんで」
「そうか。……ちなみに、なぜ苦手なんだ?」
「……苦いからです」
神村が肩をすくませ笑う。
「笑わないでくださいよ」
「いや、すまない。馬鹿にしたつもりはないのだが……。苦味というのは本来毒のシグナルで、動物が危険を感じる味だそうだ。そういう考え方でみれば、君は危険に敏感だとも言える。悪いことではないさ」
そうだろうか。ただ単純に子供舌というだけだと思う。
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