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「では、行こうか」
神村は手早くコーヒー代の会計を済ませて、店を出た。しばらく彼女の後についてビル街を歩く。
彼女の背中のあたりで艶のある黒髪が揺れている。その後ろ姿に冬吾は思わず見惚れてしまいそうになった。
女性として、というよりは、一流の美術品を眺めているような感覚に近いかもしれない。行き交う人々の中にも時折振り返る者がいるほど、神村の美貌は卓越していた。背が高く、モデルとしてでも充分通用するだろう。
歩く姿は威風堂々、それでいて流麗。まるで研ぎ澄まされた刀剣のような印象を受けた。
「どうかしたか?」
「えっ」
突然尋ねられ、慌てた。じっと見ているのを気取られたか。冬吾は咄嗟に質問をすることで誤魔化しを図る。
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