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「他に何か質問はあるか?」
神村が言う。一応考えてみたが、なにも思い浮かばなかった。
「いや、特には」
「では、こちらから一つ訊いてもいいか?」
「え? ああ……どうぞ」
「その髪は、ファッションか何かか?」
「へっ?」
神村は冬吾のほうを振り向いて、右の耳近くの髪を指さす。
「そこのところ。私には寝癖のように見えるのだがな?」
「あっ……」
自分で触ってみてやっとわかった。毛先がハネている。朝に治したつもりだったのだが、寝癖がまだ残っていたようだ。
「す、すみません」
慌てて手で撫でつけて治す。神村はそれを見て笑い、
「気をつけたほうがいい。せっかくのいい顔が勿体ないぞ」
「は、はぁ……どうも」
冗談だとわかっていても、そう言われると悪い気はしない。我ながら単純である。
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