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「あの、どこから入れば?」
「そこの階段から一階分下るんだ。その先に入口がある。ここは裏口だが、表のほうも似たような造りだ」
見ると、ビルの際のところに下りの階段があり、コンクリートの地面がそこだけくり抜かれたように窪んでいた。ひっそりとしすぎていて、言われるまで気づかなかった。
階段を下っていく。両側はコンクリの無機質な壁になっていて、建物へ入ろうとする者の姿を周りから隠すかのようだ。奥まで下っていくほどに、段々と陽の光が遮られ薄暗くなってくる。まるで秘密基地に入ろうとしている時のような妙な緊張感があった。やがて、扉に行き当たる。
「岸上は七階の会議室で君を待っているはずだ。ああ、会議室といっても別に会議中というわけではないから安心してくれ。場所も……まあすぐにわかるだろう。もし、会議室に岸上が不在ならそのまま中で待機していてくれて構わない」
神村はまた腕時計を見ながら言った。
「では、行ってきたまえ」
「あ? ……え?」
不意をつかれたような顔をする冬吾に、神村は不思議そうに眉を上げた。
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