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こういうのってもっとこう、ロマンチックなものを想像していたんだけど。いや、自分がそういった感性に疎いだけで、これも充分劇的と言えるのかもしれないが。
冬吾はため息をつき、困ったように首元に手をやった。
「なんだかな……」
妙なことになったものだ。岸上という男に突然呼び出された結果、見知らぬ会社のビルに一人で入るはめになってしまった。
だが、ここで帰ることなどできるはずもない。岸上豪斗が父の死について何かを知っているというのなら、何としてでもそれを訊き出さないことには、冬吾の気持ちは収まらないだろう。
冬吾は目の前の扉のノブに手をかけた。
「よし……行くか」
意気込んだそのとき、背後から神村の声がした。
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