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「覚悟することだ」
「……は?」
顔だけ振り返って後ろを見る。上からの逆光の中で、神村は冬吾へ語りかける。その姿はどこか異様で――まるで、妖艶に微笑む魔物のようにも見えた。
「この先、君は、未知の世界へと足を踏み入れることになる」
「え……?」
なんと返したものか。たしかにここが知らない場所であることには違いないが、未知の世界とはちょっと大げさすぎやしないか。
「これはささやかな助言だが――最後まで諦めないことだ。そうすれば、あるいは幸運の女神が君に微笑むかもしれない」
神村の言うことは要領を得なかった。だが、どうやら自分を気遣ってくれているらしいということは理解できる。
「はぁ……えっと、わかりました」
……わかってないけど。
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