第一章――――二つの出会い

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「ありがとうございました、神村さん」  そう別れを告げ、冬吾は扉を開いた。背後で彼女の声が聞こえた。 「……健闘を祈るよ」  裏口から入った先は、細長い廊下になっていた。人の姿はなく、静かなものだ。腕時計で時間を確認してみると、時刻は午後二時半を少し過ぎたところ。昼休みも終わって仕事中だろうか。迷惑にならぬよう気をつけなければ。  十メートルほど進んだ先、右手側にエレベーターがあり、廊下はそこで左に折れていた。おそらく、廊下をそのまま進めば表口のほうへと繋がっているのだろうが、今はそちらへ行く必要はない。  呼び出しボタンを押してしばらくして、エレベーターが降りてくる。中へと入り、扉横のパネルで階数を確認してみると、このビルは地下二階から上は十階まであるらしい。ここは地下一階だから、この下にもフロアがあるわけだ。
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