407人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、ああ、ごめん。わかってるよ、もちろん。わかってるとも」
冬吾はどぎまぎしながら七階のボタンを押す。歳の離れた神村と話す時にはまだ平気だったのだが、やはり同世代くらいの――それもこんな美少女が相手となるとどうしても緊張してしまう。
「ええと、君は何階?」
「あ、九階おねがい」
九階のボタンを押す。エレベーターが動き出した。
「お兄さん、ここの人じゃないね? 何の用事?」
彼女は初対面とは思えないほどフレンドリーに話しかけてくる。だがそれを不快には思わなかった。
「人に呼ばれてるんだ」
「なんて人? あたし知ってるかも」
「岸上って人なんだけど」
「岸上……岸上なにさん? ……あ、七階ってことは豪斗おじさんか」
「そうだけど、知ってるのか?」
「うん。名前はいかついけど、優しいおじさんだよね」
「そうなのか。俺はまだ会ったことないからわからないんだけど」
「ふーん……」
「そう言う君はいったい――」
と、そこでエレベーターが停止して扉が開く。七階に到着したようだった。
最初のコメントを投稿しよう!