第一章――――二つの出会い

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「じゃねー」  彼女はひらひらと手を振る。応えるように手を上げてから、エレベーターを出た。結局、彼女が何のためにここにいるのか聞くことはできなかった。口ぶりからして、ここへ来るのは初めてではなかったようだが……。  多分、もう二度と会うこともないのだろう。その事実に少しばかり寂しさを感じつつ、冬吾は廊下を歩きだした。  正面方向と右方向に廊下は分かれていた。正面奥のほうでは、更に右へL字状に折れていて、その先に何があるのかここからでは把握できない。  右側の通路を向くと、左手側に手前から両開きの扉、片開きの扉と並んでいて、その先は行き止まりになっていた。両開きの扉のほうへ近寄ってみると、扉の上に『会議室』と書かれたプレートがあった。待ち合わせ場所は、どうやらここのようだ。
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