第一章――――二つの出会い

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「なんか、すげー散らかってるな……」  床のカーペットの上にはあちらこちらで段ボール箱や資料らしき紙の束が雑多に山積みにされていた。うかつに触れると山を崩して悲惨なことになりそうだ。慎重に移動しなければ。 「なんだ……?」  部屋の中央――長机の行列のほぼ中央でもある――に、なにやら見慣れない物体があった。白い四角形の板状の土台が、その四隅から伸びた四本の支柱で天井と繋がっている。土台は長机のすぐ上のあたりにまで降ろされていた。その土台の上に乗っていたものが何なのかわかると、すぐにそれが何のための機構なのか理解する。 「プロジェクターの……昇降機?」  こんな低い位置に降ろされているのを見るのは初めてだったから一瞬わからなかったが、なんということはない。それは冬吾の通う大学でも使われている。プロジェクター、つまりスクリーンに映像を投射する機械を、天吊りにして使うための装置だった。普段は天井の中に収納されており、必要なときだけリモコンで操作して土台を下降させ、その上に固定されたプロジェクターを使うのだ。見ると、部屋の奥には幅二メートル強の大きなスクリーンがあった。おそらく会議かなにかで使った後で、そのまま放置されていたのだろう。
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