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「にしても……なんか、変な臭いがするな……」
入った時から異臭があった。例えるならそれは、学校の理科室にある薬品棚の臭いだ。その臭いは奥の方へ進むごとに強くなってきた。耐え難い、というほどではないが、不快だ。この部屋には窓がないから、換気ができない。かといって、勝手に入っておいて空調を操作するのも気が引ける。我慢するしかないか……。
あちこちに置かれた荷物を踏んだり崩したりしないよう歩いて、ようやく部屋の真ん中辺りに差し掛かろうとしたところで、途端、『落ちた』。背中がなにかにぶつかって崩れる音がした。いや……落ちたのではない。
「あ、れ……?」
なんで俺、倒れてるんだ?
足から力が抜けて冬吾は床に崩れ落ちたのだ。身体に力が入らない。急速に意識が霞がかっていく。なぜだか、ひどく眠たかった。
黒い闇が視界を覆っていって……やがて、真っ暗になった。
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