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「……ん? んん?」
後ろを振り返ってみるが、誰も居ない。冬吾の近くにいた誰かへ声をかけた、というわけではないらしい。
「何してる。早く来い」
女性が急かすように言う。誰かと間違えているのだろう――そう思いながら冬吾は女性の座る席へ近づいていった。
「あの、すみませんけど」
おそるおそる、声をかける。
女性はコーヒーに口をつけたところだった。すらりとしたパンツスーツ姿で、背中まで届く髪をうなじのあたりで一束にまとめている。マニッシュな雰囲気の漂う美人で、コーヒーを飲む仕草一つとっても優雅に見えた。女性はコーヒーを机に置くと、涼やかな眼を冬吾へ向けて言った。
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