先生と私。

4/4
前へ
/22ページ
次へ
「千聖ちゃん、千聖ちゃんってば!」 「え……私……?」 「どうしたの?いきなりぼーっとしちゃって。何度呼び掛けても返事してくんないから心配しちゃったよ?」 どうやら部活中に意識を飛ばしてしまったらしい。 「すみません、えっと……なんか寝不足で……」 そんな嘘をつく相手は我が文芸部の自慢の部長、真城絢斗先輩。 容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能と才色兼備な学園の王子様なの。 「大丈夫?体だけは気を付けるんだよ」 「はい、ありがとうございます」 こんな風に、先輩はいつも部員に気にかけてくれている。 「ところでさ、千聖ちゃんまた作文の腕前上げたんじゃない?すごく良く出来てるよ」 「本当ですか!?ありがとうございます!!」 なんか、部長に褒められるととても嬉しく感じるわ… 「でさ、今度作文のコンクールがあるんだけど、千聖ちゃんそういうのに興味ない?」 「え……?」 「実はうちの文芸部から一人選出しなくちゃいけなくてさ、困ってるんだよね……」 そして部長は、おおげさに嘆いてみせた。 それなら、私……っ!! 「あ、あの……それ私に任せてくれませんか?」 私がそう言うと、部長は途端に目を輝かせた。 「うん!キミならそう言ってくれると信じていた!」 「が、頑張ります……」 「あ、ちなみにテーマは大切な人、だから」 『大切な人』か…… ふと私の頭に先生の姿が浮かんだ。 私は、はっとして慌てて首を左右に降る。 先生が大切な人? ないない。 ……絶対に、あり得ないんだから。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加