76人が本棚に入れています
本棚に追加
「マジで別行動は危険だ。離れないで」
「うん」
その手を俺もギュッと握り返した。
やだな~、職業柄さ。どーしても思い出しちゃうんだよ。
昔あったんだよねぇー。霧に包まれたゴーストタウン……。たまたま出会ったペアでさ、脱出するんだよ。怖いゲームなんて普段やんないけどさぁー、ゲーム雑誌とかで紹介されてたり、ゲームショウ行った先でチラ見とかさー。余分な知識がね? あー、考えたくないのに考えちゃうよぉ。
基本俺はRPG派なのね? アクション系より ほのぼのレベル上げな方なわけよ。
そんな理由でせめて霧の中から襲いかかってくるのは、目のクリっとした雫型のスライムであってくれ! ってか、俺たちの装備って懐中電灯だけだぞっ! すっごく心もとないよっ!
やっぱ一旦旅館へ引き返してアイテムとか集めるべきじゃなかったの? ほら、厨房とか行ったら刃物とかあるじゃん。でも、それはそれで怖いか……じゃぁ、フライパンとか? 鈍器的な? 後さ、回復系? 取り敢えず救急箱?
あー、朝ごはんだけでも食べた方が良かったんじゃね? 俺達の体力ゲージどっかに表示してよー! その前にセーブは!? 冒険前には必須でしょ? 日記書かせてーーー!
頭の中で喚き散らしてると……。
「……しまったな。さっき朝食準備してあったんだ。飯、食っとけば良かった……なんて今更?」
はっ!
俺はパッと顔を上げて潤くんを見た。ここに来てまさかの思考リンク!
そう言えば潤君も実はゲーマーだったっけ……。
潤くんがニヤリと笑みを浮かべた。
「なんかさ……サイレントヒルとか……思い出せない?」
俺は更なる二度見をした。
どこまでも共鳴し合う思考!
ビビってしまってるのに、何故かちょっと嬉しい俺っ!
「懐かしいよな……って懐かしがってる場合じゃないけどさ。高校ん時、夏休みにさ……一緒にやったよな? 先に寝落ちした方が負けって……結局、朝が明けるまで……ははっ」
「あは、やったね。でもあれはサイレントヒルじゃないよ? もっと明るい楽しいやつだった」
「桃鉄だっけ?」
「いただきストリートだよ」
なんてどうでもいいゲームタイトルについてこれでもかと明るく話す俺たち。
潤君も不安で動揺しないようにと振舞っているのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!