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「加賀…加賀!」
「は、はい!」
「集中力が足りん。ここ、脱字だ。らしくないミスするな」
少しだけトリップしていたあたしを、間宮次長が呼び戻す。
「次長もちょっとオーバーよねえ…秘書課から一緒に引っ張ってきたらしいけど、大したことないじゃない」
駄目だ、藤次郎に迷惑かけてる。
冷ややかな視線を向けられることは慣れている。別に痛いとも思わない。
言いたい人間には言わせておけばいい。
ただ、あたしを見込んでくれた藤次郎の期待を裏切りたくない。
「坂井さん。企画書、もう上がりました?」
「あっ…今やってます!」
「まだですか…僕、昼から出張になりましたからそれまでにください。急いで」
顔は笑っているけど、口調が厳しい。
こうしてさり気なく、藤次郎はあたしを助けてくれる。多分後でやっかまれることも見越して、手を回してくれる。
あたしは、藤次郎に助けられてばっかりだ。
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