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「あーあ、間宮さんももうすぐ結婚しちゃうのかぁ…」
目の前でカツカレーを頬張っていた真里が、急にその手を止めてスプーンを置いた。
ガチャン、と、ガラステーブルとの接触が生み出した鈍い音に、隣の席に座っていた年配の女性社員が渋い顔をする。
「結婚したら、やっぱりゆくゆくはココの後継者になるんだよね」
「そういうことになるね」
「イイ男が売り切れるのって、早いんだよねー…」
「次長レベルの男なら、世の中腐るほどいるわよ」
「へえ?会ったことないけどね、あたしは」
「ほら、会計課の池永くんとかオススメ。今度、車買い替えたらしいよ」
「あいつマザコンじゃん!結婚してあたしが母親とケンカしたら絶対母親の肩持つじゃん!」
二十六にもなると、汚い欲が生まれてくるものだ。将来設計のためには致し方ない欲望だと、あたしは思うのだけど。
お金より愛、も結構なんだけど、お金がなきゃ愛せない、とも思う。
これもやっぱり、藤次郎が言っていたこと。
影響されているのは否めない。
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