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埋め込み、孵化させる。誰がしたかわからないがまともな神経じゃないね」
「とにかく蝶を一羽、捕まえよう」
と真っ赤な蝶に触れようとしたが、山都の手をクルリとすり抜けると彼に向かってまっすぐ飛んできた。
「な!?」
シュウッと旋回した、蝶が羽を使って山都の頬を裂いた傷口から血が溢れ出す。それをきっかけに辺りに散っていた赤色の蝶が一斉に山都に向かって迫ってきた。
「山都っ!!」
「心配するな。やられてない。けど、伊織、こいつらは危険だ。逃げてろ」
数百の蝶達が一斉にに山都の血を求めて集まっ定期、真っ暗な夜空に赤色の血が舞った。
同時刻、とある屋敷の地下室、一人の白衣を着た男が少女の腕に注射器を突き刺して血を抜き出した。
「フ、フフフフ、いいぞ。いいぞ。揚羽。お前の血は素晴らしい。他の動物の血を媒介に半永久的に生み出す。究極の代物だ。この力を使えればどんな奴でもねじ伏せることができる。私の研究をバカにしたクズ共を根絶やしにしてやるんだ」
ゲラゲラと耳障りな高笑いを上げる男に、少女はそっと自分の人差し指をガリッと噛んだ。ジワリと吹き出す、血液が真っ赤な蝶になっていく。少女は、赤羽揚羽は静かに、しかし、口を動かした。行けと、赤色の蝶が舞い羽を男の左足を切りつけた。
「…………えっ!? な、なんで、き、傷っ!?」
傷口から血液が溢れ出し、そこに真っ赤な蝶が群がっていく。揚羽はベッドから起き上がり、男を見下ろす。
「あ、揚羽ぁ!! 貴様、俺を、父親の俺を裏切るつもりかっ!?」
「…………裏切るも何も私は最初から貴方と協力関係になったつもりはない」
グリグリと親指をねじ込み、傷口を広げていく。
「貴方じゃない。貴方みたいな人は私の父親にふさわしくないけれど、死に方だけは選ばせてあげる。ここにいる蝶に血を吸い尽くされて死ぬか。それとも身体の中に押し込んだ卵の餌食になるか。好きな方を選ぶといいよ」
「ヒッ!? クソッ!! クソォォォォオオ!!!!」
男が叫び声を上げながら地下室を出て行く。揚羽は立ち上がりニィと笑った。やっと自由だ。自分を縛る鎖は全て断ち切った。あとは、会いに行くだけだ。
「やっと会える。山都お兄ちゃん」
一度も話したことのない、金髪少年の顔を思い浮かべる。怖い不良に絡まれていたときに、何も言わずに助けてくれた、彼、そのときは怖くて逃げ出してしまったけれど、きっと。
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