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ええと陰火は頷く。山都大聖がいることが事件の解決に繋がるわけじゃない。
「でも、彼が居なければ私達がこうして日々を暮らせているのは彼のおかげですからね」
「へぇー、陰火ってあんな金髪野郎がいいわけねぇ、もう五十は越えてるおばあちゃんなのにね。見た目は幼女だけど」
「フッ、フフフ、そういう貴女こそ、若い身体をして実年齢、相当マズいことになってるでしょう? 喪女ってやつですね」
「はぁ、あんたとは関係ないし。私は一人で平気だし!!」
「と言いながら昨日、山都大聖と自転車の練習をしていたときとても嬉しそうにしてませんでした? 嫌ですね。若い子にちやほやされる。おばあちゃんっていうのは」
「うるさいしっ!! 陰火だって山都に頭、撫でられて嬉しそうにしてたじゃん!! ていうか、おばあちゃん言うな!! 私はあの頃から年取ってないの!!」
「そう言うのならわたくしだって、貴女と違って将来性があります。貴女は知らないでしょうが、弱体化する以前は美女でしたからね」
「あーあー、ヤタヤダ、年取った女って何かにつけて昔はこうだった。あの頃はこうだって言い出すんだから、今の自分を見なさいよ。ツルペタのロリータボディじゃない」
「あ、貴女だってペッタンコじゃないですか!!」
「いいもん、これが私の魅力だから、昔の事を引き合い出して威張るおばあちゃんとは違うのよ」
と鏡子と陰火が不毛な言い争いを続けていた頃、
赤羽揚羽は、真朱にそっと耳打ちした。
「ねぇ、真朱さん、私、お腹、痛くなっちゃったからトイレ貸してくれない?」
「あ、うん、はい。場所、わかりますか?」
「初めて来たから、案内してくれると助かる。あの二人には言いたくないから」
「そうですね。こっそり行きましょうか」
と今日も仲良く言い争いを続ける、裕樹と田奈を部屋に残して、トイレに向かう途中のことだった。唐突に揚羽が立ち止まった。
「ねぇ、真朱ちゃん」
と低い声で言う。まっすぐ真朱を見つめ、真っ赤な瞳で彼女は、
「山都お兄ちゃん。私にちょうだい」
と金髪少年の名を言う、揚羽に真朱は何を言っているのかわからなかったが、とっさに言い返す。
「な、なんのことですか?」
「とぼけても無駄だよ。真朱ちゃん。貴女がこの家に真っ黒なメイド服を着た女の子とか、金髪の男の人と一緒に住んでることも、真朱ちゃんのお父さんとお母さんが死んだことも知ってるよ
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