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頬を掻きつつ、裕樹は言った。
「さっきからバタバタ、すっげー物音してるだろ? 何かあったか知らないけど、確認だけはしておこうぜ」
と言いつつ、裕樹は部屋の隅っこに置かれていた孫の手を取った。
「知らないわよ。私は」
「嫌なら一人でいろよ」
「待ちなさいよ。あたしも行くわ」
と二人で廊下を歩く、真朱の屋敷は広くて人が生活してるっぽいのに人の気配が全くない。
「おい。田奈、俺から離れるなよ」
「うん」
と言いつつ、田奈は裕樹の服の裾をギュッと握った。手を握るとまた喧嘩してしまいそうで嫌だった。少し歩くとギィ、ギィと廊下の向こう側から足音が聞こえてくる。裕樹がゴクリと生唾を飲み込む。誰かが来る、歩くごとにハァハァと荒い男の声が聞こえてきた。
(マズいわよ。きっと真朱さんの、家の人かも)
(真朱の親は出張中だろ。それになんで自分の家なのにあんな忍び足なんだよ)
と、聞こえないようにコッソリと話ながら物陰の向こうからやってくる、足音に耳を傾けた。誰かが来ても、すぐに対処できるように裕樹は孫の手を強く握りしめた。
最初に見えたのは、鋭い包丁の切っ先だった。二人はサァッと、背筋が凍りつく。あきらかに家の住人じゃない。
(逃げようよ。きっと強盗だって)
(バカ、真朱と揚羽の奴を残して逃げられるか)
口論しているうちに、包丁を持った男が物陰から顔を出した。あちこち転んだのか髪はボサボサで、顔は擦り傷だらけけれど、目だけはギラギラと光っていた。
「お前らも揚羽と結託してるのか」
男は包丁をカタカタと揺らして、
「お前らも俺を殺そうとしてるのかぁ!!」
包丁を振り上げて、男は叫ぶ。裕樹は田奈だけは守ろうと、孫の手を強く握りしめて抵抗しようとする。振り上げられた、包丁が刺さる寸前、
「テメーはガキになんてもんを向けてんだっ!!」
血塗れの少年が裕樹と男の間に割り込み、包丁を弾き飛ばしてそのままぶん殴る。廊下をバウンドしていく男がピクピクと床に転がった。
「どうなってんだ。帰ってきてみれば、見覚えのない連中が部屋に上がり込んでる」
血塗れの少年が乱暴に髪を掻いて、血を拭き取って金髪が見えた。赤色の衣を身にまとう少年は、裕樹と田奈を見た。
「た、田奈を傷つけたら絶対、許さないぞ!! く、来るなら来いよ!!」
「ほぅ? 喧嘩する覚悟があるってことだな?」
金髪少年はゆっくりと拳を振り上げて、
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