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ギュと奥歯を食いしばり、真朱は奥歯を噛み締めた。あと少し、あと少しでいい。さっき、何かを蹴り飛ばした音がした。事情はわからないけれど、きっとあの人が来たんだ。
「いつまで我慢するつもりなの? どうせ、死ぬならさっさと諦めたらどうなの?」
「うるさいですね。貴女だって、そんなに血を流してフラフラなんじゃないですか? ハハッ、我慢勝負と行きましょうか」
「我慢勝負? 別にそんなことする必要はないよ。だって」
揚羽はポケットから血の入った小瓶を取り出した。
「貴女の結界くらいなら、これだけでも打ち破れるから我慢勝負する必要はない」
ギュウッと瓶の栓が抜かれて、中からさらに赤色の蝶があふれ出す。
「これだけあっても我慢勝負するつもりなの?」
「…………山都様」
「そうだな。我慢勝負は真朱の勝ちだ」
え? 真朱は振り返ってしまった。聞き慣れた少年がそこにいた。全身、血塗れだが不敵な笑みを浮かべている。緊張の糸が一気に解けた、真朱はうっかり結界を解いてしまった。抑えていた赤色の蝶が一個の塊となって真朱を襲う。
「バカっ!! 戦闘中によそ見する奴がいるか!!」
その前に山都は拳を叩き込み、蝶を貫き真朱を庇う。
「山都お兄ちゃん」
「あん? 誰だ。お前。いや、そんなことはどうでもいい。赤色の蝶を街にばらまいてたのはお前か?」
「そんなこと聞いてどうするの?」
「いや、小学生のお前が犬やら猫やらを殺すには無理があると思ってな。蝶の力はお前だけれど、誰か、協力者がいるんだろ?」
「ああ、山都お兄ちゃんだったんだ。私の蝶と戦ってたの、フフ、血塗れのお兄ちゃんもステキだなぁ。まぁ、いるよ。でも、今頃、死んでるんじゃないかな。あいつの身体に卵を埋め込んでおいたから、あと、一時間くらいじゃない」
「まさか、包丁、持って屋敷に侵入してたあいつかっ!?」
裕樹達を襲った男と、目の前にいる揚羽の匂いはよく似ている。おそらく、親子。
「そうかもね。でも、あんな奴なんてどうでもいいでしょ」
ねぇ、山都お兄ちゃんと言ったときだった。揚羽の背後、包丁を持った男が揚羽を狙っていた。
「死ねぇ!!」
「あんたのほうが死ね」
パチンと揚羽が指を鳴らし、包丁を持った男の耳から赤色の蝶が溢れ出した。ドサッと倒れる男を揚羽は足蹴にして、山都を見つめて、
「お願い、山都お兄ちゃん、私のこと叱ってよ」
と言った。男から溢れ出す、
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