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「悪いことをしたら叱ってやるのが、親ってもんだろ。お前みたいなクズでも、あいつにとったら血の繋がった親なんだよ!! なんとか言えよ。クソヤロウ!!」
拳を叩き込む。男の身体がカグガクと揺れた。山都は自分の内面からあふれ出す怒りを抑えることができない。苛立ち、揚羽をあんなになるまで追い込んだ男への怒りが止まらないまま、拳を叩き込もうとする。
「や、やめて、もう、それ以上は殴らないで!!」
拳が止まる、男はとっくの昔に気絶していた。顔は真っ赤に腫れ上がり、鼻血がべっとりと男の顔を汚している。
「山都様、これ以上、殴ったら死んでしまいます」
揚羽が叫び、真朱が拳を止めていた。山都はそこでやっと正気に戻った。殴った拳は真っ赤な血で汚れ、呼吸は荒い。
「すまん、真朱、あとのこと頼めるか? 俺はちょっと頭を冷やしてくる」
ここにいたらまた、あの男を殴ってしまいそうだったからと言い訳をして山都はそこから逃げ出した。
その後、真朱が警察に通報し、揚羽の父親は警察に連行された。揚羽も親指の爪を剥いだ傷がひどかったため、蛇目の付き添いで病院へ。
残された、裕樹と田奈もしばらくしてから目覚めた。
「なぁ!! 真朱、この家って金髪の兄ちゃんがいるよな。すっげー強い兄ちゃん。真朱の兄貴なのか?」
「というか、なんであの人、血塗れなの!?」
包丁を持って現れた男より、血塗れの山都のほうが気になるらしく、真朱は二人から質問責めに合っていた。そんな人、知らないと嘘を吐いてもいつかはバレる。
「あの人は出張中の両親に変わりに面倒を見てくれてる人なんです」
と真朱は言う。嘘は言ってない、居候だがちゃんと家賃を払っている。
「なんで血塗れなの? というか、どういう人なの?」
「えっと、山都……さんは、会社の社員さんでいろんな仕事の依頼を受ける仕事をしていて、血塗れだったのは、畑を荒らす熊と格闘してきたからだそうです」
嘘は言ってない。実はこの前、山都は山奥に住む人を襲う熊と格闘してきたらしいから、聞いたときにはビックリしたけど、さすがにおおげさだったかもと後悔したが、
「確かにあの人ならありそう。暴漢、ちゅうちょなく蹴り飛ばしてたし、どっかの誰かさんとは違って」
田奈はニヤリと笑う。
「なんだよ。そういうお前だって震えてたくせに!!」
「あんた、男でしょ。私は女の子なんです」
「こういう時だけ女になるな!!」
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