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蝶が舞う。赤い羽を広げてヒラヒラと飛んでいく。蝶が舞う。血のように赤い羽を広げてヒラヒラとヒラヒラと飛んでいく。真っ赤な血溜まりに沈む男から、ヒラヒラ、ヒラヒラ飛んでいく。まるで芋虫が美しい蝶に成長するように、
「ねぇ、叱って、怒って、怒鳴って、叩いて、刺して、殴って、蹴って、罵って、刺して、沈めて、折って、潰して、引き摺って、傷つけて、私はこんなに悪い子なんだからお願い」
少女は言う。数百の蝶を従えながら、真っ赤な血の涙を流し、幼く、小さな両手を広げて少女は言う。まるで子供が親に甘えるように、
「お願い、山都お兄ちゃん。私のことを叱って」
対峙する金髪の少年、山都大聖(ヤマト、タイセイ)に懇願する。
「そりゃ無理だぜ」
けれど、山都は断った、赤羽揚羽(アカバ、アゲハ)に拳を握り構えた。
「お前を叱ってくれる奴は、お前が殺してしまったんだ。俺にはお前の望みを叶えることはできない」
「ウソッ、こんな奴、私の××××なんかじゃない」
揚羽は真っ赤な蝶に命じる。目の前の金髪の少年を殺せと。
「叱ってよ!! 私はこんなに悪い子なの!!」
山都大聖と赤羽揚羽が対峙する数日前、事件は静かにしかし、確実に広がりを見せていた。
昼下がりの教室に歓声が響いていた。ここは小学校の教室、来週の授業参観で発表する将来の自分について作文を書いているのだが、彼らにしてみれば、授業中でも好き勝手におしゃべりできる、休み時間の延長のようなもので、友達同士で何を書いているか、覗き見たりしている有り様だった。
そんな中で、髪をポニーテールにした少女、真朱は鉛筆を持って、んーっと考えていた。
将来の自分と言われても、漠然としていてイメージがわかない。一応、頭の中に将来の自分がいるんだけれど、
(山都様とずっと一緒にいたいなんて恥ずかしくて書けない)
そもそも山都様って誰と聞かれるといろいろ困る。家に居候中の金髪中卒男なんて、きっと問題だからだ。
(でも、私にとっては)
フフッと笑みを浮かべる、真朱、たとえ金髪中卒男でも真朱にとってはかっこいいヒーローだからだと、にやけそうになる顔を隠して、パタパタしていると、
「何、ニヤニヤしてるんだよ。真朱」
「ひぇ!? ニッ、ニヤニヤなんてしてませんがっ!! 高間くん」
「さっきからんーっと唸ったり、笑ったりして気分でも悪いんじゃないか?」
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