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まぁまぁと真朱が相変わらず仲良しな二人を仲裁していた頃、山都は一人で屋根の上に座っていた。
「どうしたんだい。ため息なんか、ついて君らしくないね」
定番というか、神出鬼没な伊織が山都の隣に座る。
「なんかな、後味、悪いんだよ。子供にあんなところを見せたってことがな」
ただ、感情的になって暴力を振るう、失神した相手をさらに殴りつけ続けた。真っ赤になった拳が痛々しい。
「感情的になるのは、いつものことだけど、今日は違った。こいつは許せねーって思ったら理性がどっかに吹っ飛んだ」
「いいじゃないか。感情的になったって私だってあの男は痛い思いをしたほうがいいと思ったよ」
人は時には傷つかないとわからないものさと伊織は言う。
「まぁ、見ていたけど、ずいぶんとあの子、赤羽胡蝶のことを気にかけるじゃないか」
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
「好奇心ってやつかな」
「気にしてたわけじゃないけど、あいつの叱ってほしいって気持ちはなんとなくわかったんだよ。父親なんていなかったから、バカみたいなことやってわざと怒られるような真似をしてた」
本当はただ、気を引きたかっただけだ。父親がいないことを忘れるために、なんか、一人ぼっちになった気分になって、悪戯や喧嘩しては怒られていた。
「生きてるか、どうかもわかねー。、母さんが言うには渡り鳥みたいな人で一カ所に止まると死んでしまうらしい」
「マグロか」
「いや、むしろ、鉄砲玉だな。飛んでいってどこ行ったかわからない」
「ふーん。なるほど。君が誰よりも強さを望むのは父親の影響というわけか、誰よりも強い一家の大黒柱。ファザコンめ」
「違うしっ!! 俺はそういうんじゃないしっ!!」
力一杯、否定するが、はぁとため息をついた。
「いいじゃないかな。何の理由もなく人を救うより、わかりやすい動機があったほうがいいよ。ね? お父さん」
「誰がお父さんだっ!!」
「フフフ、いいじゃないか。陰火達に自転車を教える君はお父さんらしかったよ」
日曜日のお父さんみたいだねと伊織がからかう。
「嬉しくねぇし、お父さんでもねぇし。つーか、何で、お前も知ってんだよ」
ケッといじける、山都に伊織がクスクスと笑った。
「私はなんでも知っているんだよ。山都、まぁ、赤羽胡蝶にとっては家族のように見えたんじゃないかな。喧嘩しても仲良くなれるみたいな関係にね」
「家族ね」
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