第1章

3/21
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
ん? と真朱の顔を覗き込む少年は、高間裕樹(タカマ、ユウキ)。短い髪に色黒の肌が特徴的な少年だ。 「なにやってんのよ。裕樹、真朱さんが困ってるでしょ。あんたの汗臭い顔なんて近づけられたら迷惑よ」 と高間の耳を強引に引っ張った。気の強そうな目つきに男勝りな性格の少女は、本町田奈(ホンマチ、タナ)。 「お前のキンキンとうるさい声を聞くほうが嫌だってーの。あーうるさい。うるさい」 「なんですってって、ごめんなさいね。真朱さん」 「い、いえ、私は気にしてませんから、それより二人は幼なじみなんですから、もっと仲良くすべきなのでは?」 と真朱は二人の仲裁に入るが、裕樹と田奈は揃ってハァー? と顔をしかめ、 「「こんな奴と仲良くするなんて、嫌だ」」 口を揃えて言った。見事なシンクロに真朱は思わず拍手しそうになったが、シンクロしたことにいがみ合う二人にそれどころじゃなくなった。 「でもよ。作文は来週までに書かないといけないんだぜ。田奈の奴はどうでもいいけど、真朱は終わってるのか? ちらっと見たけど、あんまり書けてないだろ」 「ヤダ、裕樹、覗き見なんて最低」 裕樹にどうでもいいと言われた、田奈が真横から野次を飛ばすが、彼はフンッと鼻を鳴らして、 「どーせ、教師になりたいですとか書いてるんだろ?」 「な、なんで知ってるのよ!! もしかしてアタシの作文も覗き見したの?」 「してねーよ。お前の書くことなんて予想できるだけだし」 「へー、そういうあんたはサッカー選手とかなんでしょ? 今時、そんな夢を書くのはあんたくらいよ」 「サッカーをバカにするなよ。いいじゃんか、サッカー選手になりたいって自分に嘘をつくより、バカ正直になれって父さんも言ってたぞ。そういうお前だって教師なんて似合わないし!!」 「知らないの? サッカー選手は運動できるだけじゃダメなのよ。頭だってよくないといけないんだから、バカなあんたじゃ一生、無理!!」 「なんだと!! やってみないとわかんないだろうが!!」 いがみ合いから、喧嘩になりそうな二人にさすがにマズいと真朱が止めに入ろうとするが、 「はい、二人ともストップ。仲良しなのはいいけれど、喧嘩はよくないよ」 掴み合いの喧嘩をしそうな二人を長身のメガネをかけた男が止めていた。真朱達の担任だ。 「今は授業中だからね。班ごとに話し合いしながら書く
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!