第1章

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「ああ、真朱には秘密にしておいてくれって、陰火や鏡子に頼まれてな」 蛇目に話してもよかったが、うっかり真朱にバレてしまうと面倒だからだ。まぁ、秘密にしておく理由もないんだけれど。 「ふーん。へぇー、てっきり練習にかこつけて二人にいけないことしてると思ってたけど」 「いけないことってなんだ? 俺は自転車の練習してただけだぞ?」 まぁ、真朱が危険な転び方をしたり、鏡子が泣きそうになったりして泥を払ったりとっさに抱きしめていたりしていたが、蛇目はモジモジしながら、 「え? あ、えっと、そのいけないことっていうのは、や、山都くんのエッチ、女の子にそういうこと言わせて喜ばせるなんて変態さんなんだねぇ」 蛇目が何を言っているか、山都にはわからなかったが面倒なので放置していると彼女はプーッと頬を膨らませて、 「私は赤色の蝶の噂を調べてると思ったよ」 「赤色の蝶?」 と聞き返す。蛇目の性格は面倒事や厄介な事件に首を突っ込んでは、山都に報告する悪癖があるのだ。 「教えてほしぃ?」 「ああ、できればな」 「どうしよぉーかなぁ。最近、私の扱いが荒い気がするんだよなぁ。陰火ちゃんや鏡子ちゃん、真朱ちゃんばーっかりかまってる気がするんだのよなぁ」 「だって、お前、風呂に入ろうとしたり、布団に侵入したりめちゃくちゃなんだよ」 ビックリすると山都が答えた。 「この前は伊織ちゃんに膝枕してもらってたしねぇ?」 ウッと図星をつかれた、山都が後ずさる。あの夜の事はみんなには秘密にしておいたのだが、蛇目は知っていたらしい。 「それに言うと、真朱ちゃんと一緒にお風呂、入ってたようなぁ」 「あれは真朱の奴がうっかり入ってきただけだ」 「平然と受け入れる山都くんはおかしい」 「真朱は小学生だろ? 子供と風呂に入るのに何が悪いんだ?」 しかし、その後、真朱が茹で蛸になったんだよなぁと山都が内心で呟いたが蛇目には聞こえない。 「山都くんの朴念仁は、昔っからかぁ」 うんと彼女は頷く。 「じゃあ、赤色の蝶を教えてほしかったら私の名前を呼んで」 「蛇目」 「下の名前、日傘」 「日傘」 「……う、もう一度」 「日傘」 「身体が温まってきたから、もうギューッとしてから名前を呼んで」 「わかった」 山都は蛇目を抱き寄せて、耳元で「日傘」と呼んだ。ポンッと湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしながら蛇目はあうあう言って、
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