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あわぁーーーーっと叫んで逃げていった。
「お、おい、赤色の蝶について」
教えてくれと呼び止めようとしたが、彼女は夜の街に逃げ去ってしまい、姿は見えない。
「おい、そこの朴念仁」
「おお、伊織」
「おお、伊織じゃないよ。君は何をやってるんだい? 夜の街で、女の子と抱きしめて? もう一度、聞くよ。何をやってるんだい?」
相変わらずの神出鬼没、物語の神様、伊織はプーッと不機嫌を隠すことなく言った。青色の着物に、白色の髪が広がっていく。
「情報を聞き出そうとしていたんだが?」
「端から見ればイチャイチャしてるようにしか見えない!! 情報が欲しければ、私を頼れよ。赤色の蝶だろ。次の相手だ。陰火や鏡子と自転車の練習や、蛇目とイチャついてる場合じゃない!! 君、最近、たるんでないかい?」
怒髪天をつくとはこのことだろう。不機嫌、全開で伊織は山都を睨みつけた。
「日頃の鍛錬は忘れてないし、お前が教えてくれた、力の修行もやってるぞ」
「そういう意味じゃないんだがね。赤色の蝶だが、フム、いつもタダ、同然で教えてくれるわけない。便利な情報源、扱いされるわけにはいかないな。山都」
ビシッと人差し指を山都に向けた。
「夜のデートだ。付き合いたまえ。ほれ、お姫様抱っこだ。してくれないと赤色の蝶について教えないぞ」
「ああ」
ひょいっと伊織をお姫様抱っこされ、伊織はポッと頬を染めた。
「教えてくれよ」
「ダメだ。言っただろ。夜のデートだと、獅子の力を発現させろ。行きたい場所がある」
「行けばわかるのか?」
「わかる。だから、早くしてくれ。誰かに見られたら恥ずかしい」
山都が獅子の力を発現させ、夜の街に伊織とデートに出かけた頃、
取り残された、陰火と鏡子は顔を見合わせていた。何があったかわからないが、山都が蛇目を抱えて、外に出たと思えば十分くらいして、蛇目が真っ赤な顔をして戻ってきた。それは別にいい、おかしいのは二人がイチャイチャしていると、真っ先に邪魔に入る真朱が何もしない。
学校から帰ってきてから、プリントと睨めっこしている。
「あーっ!! めんどくさいわね。あんた、さっきから何を見てるのよ」
と真朱の持つ、プリントをサッと真横から奪い取ると覗き込んだ。
「へー授業参観ね。これってあれでしょ? 親があんたの授業を見にくるんでしょ? 何をそんなに悩む必要があるのよ。堂々としてればいいのよ」
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