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紘斗が煙草を一本取りだすと、向かいに座っている美春が、テーブルに置いたジッポライターに手を伸ばしてきた。
「いい。自分でやる」
手を軽く上げて美春をさえぎった。
美春は手を引っこめ、ほんのわずかに肩をすくめた。
煙草に火をともし、ひと息吸ってすぐ吐きだした。
そのとき、店の奥にある長テーブルで歓声が沸いて、思わず目を向けた。
ここに座って何度めなのか、視線のさきの彼女と目が合った。
肩より少し長い髪がふわりと顔を縁取っていて、はしゃいでいる姿は一見勝気な感じもするが、全体的に繊細なイメージを受ける。
何か声をかけられたようで彼女が横を向く。
片方だけ耳に髪をかけていて、その剥きだしの耳はあどけない。
ひと目見た瞬間に幼い姿が重なった。
保証はない。
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