第8話 繰る糸-贈り物-

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「会社からだ」 美春に断りを入れ、紘斗は席を立って化粧室のほうへと向かった。 男性専用のドアのところで通話ボタンを押した。 新人からの電話で、ロンドンからの問い合わせに答えられないでいると云う。 「急ぎか?」 『手続き上、一時間内に返事が欲しいそうです』 夕食を取るのに出てきただけで、このあとまた会社に戻ることになっているが、ゆっくりもしていられないようだ。 「わかった。向こうには返事を間に合わせると伝えてくれ。……いや、課長にはおれから連絡する」 紘斗が話している途中、当然ながら予告なく彼女が化粧室のスペースに入ってきた。 彼女は女性専用の化粧室に入るわけでもなく、何かを待つようにドアのまえに立っている。
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