第8話 繰る糸-贈り物-

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「付き合ってほしいとかそういうんじゃなくて、また会えたらと思って」 率直に云う彼女から目を落とすと、紙には姫良の名と携帯番号らしき数字が並んでいる。 「こういうことをいつもやってるのか?」 自分でも驚くほど声は険しい。 「ううん。はじめて」 紘斗と対照的に、姫良は紙を差しだしたまま、あっけらかんと首をかしげた。 「名刺、待ってるんだけど」 わがままっぽい云い方には怒るより、ませた口調が重なり、あのときの気持ちを紘斗のなかに甦らせた。 僕が大人だったら――。 それでもためらった。 「今日、わたしの誕生日なの。プレゼントは名刺でいいから!」 「おれには関係ない」 素っ気なく云うと、姫良は笑った。 笑うシーンなのか? 紘斗はそう思いながら眉をひそめる。
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