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「付き合ってほしいとかそういうんじゃなくて、また会えたらと思って」
率直に云う彼女から目を落とすと、紙には姫良の名と携帯番号らしき数字が並んでいる。
「こういうことをいつもやってるのか?」
自分でも驚くほど声は険しい。
「ううん。はじめて」
紘斗と対照的に、姫良は紙を差しだしたまま、あっけらかんと首をかしげた。
「名刺、待ってるんだけど」
わがままっぽい云い方には怒るより、ませた口調が重なり、あのときの気持ちを紘斗のなかに甦らせた。
僕が大人だったら――。
それでもためらった。
「今日、わたしの誕生日なの。プレゼントは名刺でいいから!」
「おれには関係ない」
素っ気なく云うと、姫良は笑った。
笑うシーンなのか?
紘斗はそう思いながら眉をひそめる。
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