第8話 繰る糸-贈り物-

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ミザロヂーは継母の貴刀早苗(タカトウサナエ)がオーナーで、遠野姫良の名はまかり通っている。 早苗とは打ち解けきれずに会うことは少ないけれど、こうやって姫良が店を利用することを彼女は喜んでいると父は云う。 「姫良の誕生日ってばいっつも雨なんだから」 「しかたないでしょ。梅雨なんだし」 席に着くなり、友だちふたりが会話を交わすと笑い声が広がった。 このふたりは毎年のように同じ会話を交わしている。 今日、六月二十四日は姫良の誕生日だ。 高校から始めた誕生会は五年めを迎えた。 カレシを差し置いても同じメンバーで集うのが暗黙の了解となっている。
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