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彼等が思い出しているのは1人の人間、それも女性の事だ。アイン・デスケイドと言う名であったその女性は一言で言い表せば凄い女性だった。彼女を知る大半の者に彼女の事を訊ねると大体が「凄い奴だった」口を揃えて言う。それが最大限に現れたのが天狗のクーデターの最終段階だ。アインの活躍によりその異変が解決されたと言っても過言ではないのだから。
「もう半年近くになるのか……」
天狗Zは思い出す様にしながら言う。そう事は半年前に起こった。永遠亭にて普通に生活してしいたアインが何の兆しも無く突然居なくなったのだ。
「えぇ……。でも、彼女が居ない事に全然慣れないの。ついつい名前を呼んじゃうのよね、アインって……」
しみじみと語る永琳。永琳は居なくなっても尚、彼女の存在を近くに感じていた。居なくなったと言う現実が受け止めれていないのだ。それ程までに永琳の中で彼女の存在は大きかった。
永琳は天才である。頭の構造が一般人とは程遠い構造であり、それ故に悩みもまた少しばかり特殊な物だった。一般には理解し難い悩みを永琳は誰にも相談する事が出来なかった。しかし、彼女は永琳の悩みを理解した。別に彼女が天才だった訳ではない。単純に永琳の悩みに同意し共感し、そして解決への道を示しただけに過ぎない。それが永琳には何より嬉しかった。最終的に永琳は心のどこかで彼女に依存する様になっていた。
「……仕方ねぇさ。なにか進展は?」
「何も……本当にどこに消えたのかしら……」
アインが消えてから永遠亭の住人はもとより幻想郷の各地で捜索が行われた。特に取り決めた訳ではなかったのだが、アイン・デスケイドが行方不明となったと言う噂が広まるのと同時に捜索活動は行われていった。博麗 霊夢に至っては「異変の始まりかもしれない」と気合いを入れて捜索を行っていた。永琳だけに限らず、アイン・デスケイドと言う女性は幻想郷の各地に影響を及ぼす女性であったのがこの一連の流れで理解できるだろう。しかし、そんな捜索の甲斐なく全く情報は集まらなかったのだ。
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