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普通、情報が集まらなければ諦める物だが、半年経った今でも規模こそ縮小したものの捜索活動は行われている。永琳もアインに関する情報が無いかと永遠亭に訪れる患者の噂話に耳を傾けていた。尤も情報は集まって居ないのが現実なのだが。なぜ人々が諦めないのか、そこにはちゃんとした理由が存在する。
「彼女の事だ、死んでるっつう事はねぇだろうしな」
天狗Zは思い出す様に呟く。彼の記憶の中にあるアインの姿は瀕死ではあるものの生きている状態ではあった。
「あら、知らないの?彼女、実は二回くらい死んでるのよ?」
「う゛ぇ!?」
永琳の発言に天狗Zは名状しがたい規制を上げた。アインが死んだ事があると言う事実はそれ程衝撃的な物だった。
「本当よ。ま、その二回とも生き返ったんだけどね」
「結局回復してんじゃねぇか。HAZERDじゃなくて良かったな」
「はざーど?なにそれ?」
「あぁ、HAZERDってのは……」
「師匠!!大丈夫ですか、さっきの音はなんですか!?」
天狗Zの言葉を遮り、足音を響かせながら何者かが2人に近付いてきた。
「空気読みなさいよ、うどんげ……」
永琳は駆け寄って来た愛弟子、鈴仙 優曇華院 イナバに冷たい視線を向ける。
「えっ」
「何でもないわ。それよりも来客よ」
永琳は天狗Zの方へ顔を向ける。
「よっ」
「天狗さん、お久しぶりです!!待っていて下さい、お茶を煎れてきますから」
鈴仙はお辞儀をすると再び廊下を駆けていく。
「元気だな……。彼女が一番辛かった筈なのにな……」
鈴仙の後ろ姿を見送りながら天狗Zは小さく呟いた。鈴仙とアインは恋仲でありそれは幻想郷内でも有名であった。故に幻想郷内で鈴仙はアインに一番距離が近く、行方不明となった時のショックは計り知れない物だったに違いない。だが、彼女は落ち込みはしなかった。何故ならば、誰よりもアインを信じているからだ。
「で、何の話だっけ?」
「あの娘のせいで忘れちゃったわ……」
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