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「それより、貴方は何しに此処まで来たの?まさか世間話をしに来た訳じゃないでしょ?」
「それも強ち間違いじゃあないんだがな」
苦笑いしながら天狗Zは何やら紙を取り出した。紙にはびっしりと薬の名前が書かれていた。
「それを貰いに来た。本来ならば天狗Jが来る予定だったんだがな、仕事の休みが取れなかったらしくてな、都合よく俺が休暇だったから代わりに来たんだよ」
「なるほど……」
紙を受け取った永琳は書いてある内容に目を通す。と、ここで鈴仙がお盆を抱えて戻って来た。
「ちょうどいい所に来たわね、暫くZの相手をしておいてくれないかしら。私は薬の調合をしてくるわ」
鈴仙の返事を聞かないまま永琳は廊下を歩いていく。
「もう、私の返事を聞いてくれたっていいじゃない。そう思いません?天狗さん」
「俺に振られても困るんだが」
「とりあえず、お茶どうぞ」
「とりあえず、お茶どうも」
天狗Zは差し出された湯のみを持ち、お茶を一口含む。緑茶特有の渋みが口に広がる。飲み込んだ後の微かに残る後味も天狗Zは楽しんでいた。天狗Zは緑茶が好きなのだ。
「しかし、俺とじゃ話す事もねぇだろ」
天狗Zがそう思うのも無理はなかった。種族に始まり、性別、性格、生活リズムから趣味から何まで天狗Zと鈴仙とで見事なまでに一致する項目が無いからだ。故に天狗Zは単純に話題に困っていた。最終的にどうせ話す事が無いのだから、無理やり話そうとしなくてもいいんじゃないかと言う結論に天狗Zは至った。
「……そうですね。なら、こうしましょう。天狗さん、最近どうですか?」
しかし、天狗Zの考えとは裏腹に鈴仙は話を振ってきた。
「最近、なぁ……。別に悪くはねぇが、仕事が増えすぎだ」
天狗Zは元々は下っ端で、そこまで忙しい生活は送っていなかった。だが、先のクーデターで妖怪の山が乗っ取られてしまい、再建をせざるをえなくってしまったのだ。天狗Z達が推し進めた計画は図らずも達成してしまったのである。
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