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「……………………っ、」
「どうした?蘇芳。」
「…………いえ、何も。」
先程、来社されたお客様から頂いたチョコレートの詰め合わせを、社長とティータイムで食べていたのだが。
少し考え事をしながら食べていたら、うっかり上唇を噛んでしまった。
甘いビターチョコの中に広がる、血の味。
舌でペロっと舐めると、少しピリッとする。
ああ、嫌だな。昔から口の中を噛むと、必ず口内炎になるんだよな。
「蘇芳。もしかして、口の中を噛んだのか?」
「ええ、まあ………。舐めておけば大丈夫なので。」
ニヤニヤしながら近付く社長から隠すように、右手で口元を覆う。
その笑顔、悪い予感しかしない。
「…………見せてみなさい。蘇芳。」
俺の前に立ち、右手で顎を掬いあげる。
「…………………。」
ほら、また、的中した。
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