角田の視点

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「安心しろよ。殺しはしないんだって。ああ、これなんだっけ、映画か何かかな。『悪人は自分のことをペラペラ説明したがる』んだって。今の私がまさにそれだな」  ブスミヤは、劇団員みたいに饒舌に話を続ける。 「やられる方も不安だろうから、お品書きを書いておいた。目を通せ」 一枚の紙が目の前の机に置かれた。「お品書き」に目をやる。  一、声を出されると困るので、舌にハンダゴテを当てます。  二、音を出されても困るので、水酸化ナトリウムカクテルを飲ませます。  三、見聞きされると困るので、目に針を刺し、目玉もくり抜きます。  四、見聞きされると困るので、爆竹で鼓膜を破ります。  五、痛みを与えたいので爪をはがします(両手両足20枚)。  六、痛みを与えたいので腹を蹴ります。死なない程度に蹴ります。  七、歩かれると困るので、手首足首を切り落とします。  八、とにかく痛みを与えたいので、歯を抜きます。 「三十五番まであるからな。まあ、八時間くらいで終わると思うよ」  三十五、五感の無くなった惨めな達磨は、宅配便で実家に送られます。  ねぇブスミヤ……、こんなのってまさか冗談よね? 「さて、時間も惜しいし始めようか」 まだ全て見終えていないけど、ブスミヤは「お品書き」を燃やしている。 一斗缶と百円ライターまで持ってきていたんだ。 ここまではブスミヤのシナリオ通りなのね……。 しかし、一瞬ならばチャンスがある。舌にハンダゴテを当てる瞬間に大声を出せば……。 ブスミヤは何らかの薬品をタオルに浸している。 あれを押し込んで声を出せなくするつもりらしい。 この恐怖で気絶できたなら、神か仏があったのだろう。意識は明確にある。 目の前に薬品滴る雑巾が迫った。
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