第1章

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ネットの情報は鵜呑みにはできない。 警察が来ているのに、未成年を匿い続けているという矛盾しているような内容が現に書かれていたのだ。 しかし、住所や家の外観まで特定されていたのだ。 私にとっては追い風であることは間違いない。 たっぷり一時間はかかってフラットメロディに到着すると、私は携帯の「110」を押した。 いざという時に、通話ボタンを押すだけで警察に連絡が行くようにだ。 ドアや窓から中の様子を伺った。 幾人かがいるようだが、騒いでいる様子では無い。 ドアは風通しのためか半開きにしてあるので、注意しながら中へ入った。 玄関を上がるとリビングのような開けた部屋があった。 右にはドア、左には襖があり、襖もまた閉まり切っていなかった。 私は息を殺し、足音も立てず覗いてみた。 部屋の中にはソファーがあり、そこには男性三名が座っていた。 髪型から判断するに例の家出少年らであろう。 その左側に、鎖が見えた。 大型犬などを室内で飼う際に使うようなものだ。 男性三名の座るソファーの奥にはテレビがあった。 ーー何か見てはいけないような、世界の秘密を知ってしまうような、そんな気がした。 しかし、それは一瞬の感覚であり、何よりも和美を助けるための情報を掴まなくてはならない。 私は深呼吸をして画面を見た。  鎖。裸。妹の和美。複数の男性。裸。抵抗する和美。手を振っている角田一派。 吐き気を抑える。 和美への暴力。蹴り。頬に押し付けられる火のついたタバコ。泣いて助けを求める和美。鎖につながれた和美。笑顔の角田。 幾つかの理由で震える手を体に押し付けてこらえる。 法的に許されない行為。暴力。法的に許されない行為。はしゃぐ角田。 音を立てないようにして、入ってきたドアから逃げる。近くの公園まで逃げたら、落ち着いて携帯を広げた。 「110」を見つめながら私は思った。 私は心を凍らせよう。私は復讐のためなら鬼にもなろう。 人を呪わば穴二つ? 三つでも四つでももってこい。
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