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ニタリと、ピエロは、これだからルークを弄るのは楽しい、等と考えていた。
瞬間だった。
「あ…?」
視界がブレ、数メートルほど吹き飛ばされ、痛みを自覚すると同時にバキッと肉と骨を叩きつけたような音が響いた。
「ゴホッ、いっタァ…」
殴られたのであろう右頬を押さえながら、ピエロは元居た場所を見た。
「ルークをあんまり馬鹿にしないでくれよな、思わず殴っちゃったじゃないか。」
そこには、悠然と佇む、漆黒の長髪と、どこまでも整った顔が特徴的な、ローブを着た美少女…いや、美男子が居た。
それも、ピエロが認識できなかった、いや…認識できないほどの高速移動と殴打をした後とは到底思えないほどに悠々と、息のひとつも切らさずに、彼は居た。
「ア、あっハ…まさかここまでとハ…ネ、あの老いぼれも人が悪イ…こんな人材…いヤ、神材を今まで隠して居たなんてナ、流石のワタシも敵いそうに無いナ」
「そうですか、今のでも結構制限してたんですけどね」
「うフ…化け物じゃないカ」
ピエロは、平然と会話しつつも内心、冷や汗を垂らし、珍しく焦燥していた。
世界最高神たるルークと互角の戦いが出来る自分が、まさかルークの付き人にしか見えなかった者に、二歩も三歩も遅れを取っているとは思っていなかった。
「ははは、良いざまですね、いい忘れてましたが、彼、私なんて瞬殺できますから、つまり貴様も瞬殺ですよ、ははっざまぁ」
「…そうみたいだネ」
にやにやと、先ほどまでの怒気はどこへやら、いつものにやにやとした仮面を被り、なんとも情けないことを言うルークに、がっかりしつつも、逃げる算段を立て始めた。
「そんな彼の、生前…いえ、生前の生前ですか?弟分にちょっかいをかけるなんて…いやはや、馬鹿とはこれだから恐ろしい」
「あっハ、そりゃア、関係の薄い人間にちょっかいを出したっテ、ルークもその子も絶望できないでショ?ボクとしては名案だと思ってるヨ」
「ははは、けどまぁ…それで彼…ゼティス君を怒らせて死ぬんですから、貴様も間抜けですね、今までは私相手に何とか逃げ切っていた貴様が、ゼティス君がいる今回も、逃げ切れるとは思えない、年貢の納め時ですよ、ははは」
「…」
「言葉も出ないみたいですね、ざまぁないな」
「おいおい…ルーク、積年の恨みって奴だろうけど、いつものお前らしくないぞ、抑えろって、悪趣味だな」
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