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「おっと、これは失敬、では私は黙っていましょう」
ゼティスと呼ばれたローブ姿の男に窘められ、ルークはニヤニヤとしたまま、数歩後ろに下がり、口を閉じた。
「そうしてくれ…っと、おいお前…」
「うン?何かナ?」
「悪いけどな、お前には今から死んでもらう、確実にな」
「あっハ!これは恐いネ!」
おどけたように笑って見せるピエロだが、対するゼティスはいたって真剣な表情を崩さずに、格下であるはずのピエロに一分の隙も見せず睨むようにして視線を固定している。
本当に、この場でピエロの命を刈り取るつもりのようだ。
「…どうやラ、本気みたいだネ、まいったナァ、まだ…あの子の絶望を見ていないの二」
「お前…ッ!!」
この期に及び、尚、夜月にちょっかいをかけるつもりであるピエロに、抑えていれたことが奇跡な程に、厚く重い怒りが、ゼティスの身体を、精神を支配していく。
「絶対に許さない…っ!!アイツを…夜月を巻き込んで苦しめようとするお前を…お前だけはッ!!」
「あっハ!恐い恐イ!けれド…ぶっブー時間切レ、だヨ」
「な、なにっ!?」
ピエロの言葉に、ゼティスははっとしたように無音の高速殴打を放ったが…ゼティスの拳は空を切った、確実に、ゼティスの視界はピエロを捉え拳は確かにピエロの身体を突き抜けたのに…だ。
「ルークゥ…だめじゃないカ、ワタシの力のこと位、教えておいてあげなきゃサ」
「くっ…あの技は大量の魔力を使うはず…!!いつの間に練り上げていた…!?」
数歩下がって、ゼティスを見守っていたルークが、計算外だといわんばかりに戸惑っているのを、ピエロは楽しげに笑い、嘲って見せた。
「いつの間ニ?あっハ!最初からサ!君が近づいてくるのを感じテ…君らにボクの空間が壊されるその直前!あっハ!どウ!?追い詰めたと思っタ?勝ったと思っタ?残念!逃げられちゃいましタ!!」
「ッ…!!」
悔しげに呻くルークに、ピエロはひとしきり盛大な爆笑をプレゼントした後、空を切った拳を憎々しげに見つめるゼティスへ視線を投げ。
「それじゃあネ、ゼティス君、今回はホントに死ぬかと思ったヨ、長々しく会話してくれてありがとネ」
「っ…次は、倒す…ッ!!」
「あっハ!負け犬って惨めだネ!それじゃア、さようなラ」
笑うだけ笑い、悔しげな二人の神を残して、ピエロは真っ白な世界から消えたのであった。
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