第一章 覚醒

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「果てない不安ね…あのピエロ野郎が考えそうなことだ…」 この、何が起こるかわからないという、恐怖の状況で俺が苦しむのを奴は期待しているのだろう。 そうとわかれば、俺が取るべき行動は決まっている、屹然として来るべき最悪の状況に対して、心を強く持ち、不安も恐怖もかなぐり捨てて、ただ無心に頑として心の平穏を保つだけだ。 そうだ、何を恐れている?恐れることは無い。 考えても見れば、俺は一度死んだ亡霊のような存在、言ってしまえば生き返る…転生するというのは、俺の記憶が残るのだとすれば漫画的に言うアンデッド、という存在に該当するのではなかろうか。 そりゃ腐りきった死体に魂を詰め込まれるわけじゃあ…流石に…ない、と思いたいし、アンデッド、というには少々知的過ぎるだろうが、俺個人としての感覚ではまさに生ける屍にでもなった気分なのだ。 そうなれば、晴れて俺も超常的存在の仲間入りだ、恐いものなど、本格的に無くなる。 … うん、落ち着いた、そうだ、発想の転換だ。 ポジティブに、それでいてネガティブに行けばいい。 「とはいえ…はてさて…あのピエロ野郎…俺を一体どうするつもりなんだろうな…」 奴の言い分を事実だと仮定するならば、転生する先で俺は喜び、絶望するらしい。 転生することで絶望するのは既にそうなっているのだから疑いようが無いが、喜ぶ…? 俺に嫌われないようにだとか言っていたが…く、思い出すだけでも気色の悪い言動だ、男か女かもわからないピエロに気に入られても不快なだけということがよーく分かった、なるほど、日本のストーカー被害者はこんな気分なわけだ。 …少し話しがそれたか、転生した先で俺が喜ぶこと、とは一体なんだ? これは奴の…ピエロ野郎が勝手にでっち上げた俺の喜びそうな要素なのか、俺のことをお得意の不思議な能力だかなんだかを使って調べた上での喜ぶこと、なのか… おそらくは前者ではありそうだが…俺に嫌われたくない、とか意味の分からない、そもそも好いていた瞬間が一切無く、初対面で既に大嫌いより5ランクほど上の死んでしまえという感情を抱いていたのだが…それは置いといて、嫌われたくない、ということはそれを組み込めば、俺の機嫌が取れるという確信か根拠がありそうな気もする。 … まぁ、いくら考えてみたところで、結局、奴の思考は理解できない…か
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