第一章 覚醒

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「…長い、な」 ピエロ野郎に意識を飛ばされ、目を覚ましたかと思えばまたしても真っ暗な空間というだけでもうんざりだというのに、かなりの長時間ただただ流され続けている。 真っ暗な風景に代わり映えなどあるはずも無く、いい加減、気が滅入ってくる。 「まぁ…この退屈なほどにくどい時間は…あのピエロ野郎の好みそうな嫌がらせだ、な…」 意識を一瞬で奪ったり、妙な空間を作ったり…そんなことができる奴が、こんな意味の無いトンネルを経由せねば転生させることが出来ないなどとは思えない。 「はぁ…結局、俺は流されるしかないわけだけど…」 何度も考えるのはやめようと思っては、このトンネルの旅が長すぎてつい考え込んでしまう。 「…」 ふわふわ、ふわふわ。 どれほど流されただろうか、ふと、トンネルの遥か奥底に、キラリと白く光る点が浮かび上がっていた。 「…ようやく、終点、か?」 この空間が終わるという喜びと、転生という苦行の始まりが同時に訪れたのを知り、俺は複雑な気分になりながらも、とりあえずホッと一息吐いた。 「さて…どうなることやら…」 徐々に大きくなるトンネルの終着点を前に、俺はそう呟いたのだった… <><><> カサカサと木の葉が擦れあう音、サラサラと水の流れる音、ピィピィと鳴く鳥の声、サンサンと降り注ぐ日の光。 どうやら、俺はうつ伏せに倒れているようで、周りの音等からここは森か何かであると検討を付けつつ、ごろりと寝返りを打って上を見上げた。 寝返りにあわせてシャワシャワと音を出す雑草に、どこか心地よいものを感じつつ、青く晴れ渡った空に言葉に出来ない感動を覚えた。 先ほどまでは息が詰まるほどの真っ暗な空間にいたのだ、この開放感あふれる世界を目にしただけで涙が出そうだ。 不思議と目はこの明るさに対してなんの拒否反応も起こさないが、それも感動に拍車をかけている要素のひとつだろうか、空を見上げたら眩しさで目が痛む、なんてことでもあったら、感動などせずただただこの光を恨んだであろう事は考えるまでもない。 大きく息を吸い、空気に味があるような錯覚に陥った。 日本では余程の田舎に行かなければ味わえないであろう程に新鮮で綺麗な空気、なんだか力が漲って来るような気までする。 予想していたよりも、悪くない環境だ、と、がらにも無く暢気にしていられたのは…そこまでだった。
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