第一章 覚醒

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上体を起こそうと身体を横へ捻り、腕を伸ばした時だった。 「…!?」 俺の目に不可解な光景が映し出された。 最初は見間違いとも、周りの景色に同化して…等と思ったが、マジマジとその光景を見つめ続けても、映し出される光景が変わることは無かった。 どうしてだ…なぜ、なんで… (俺の腕は一体、どうしちまったってんだ!?) 俺の目がおかしくなったのでなければ、俺が今こうして直視している光景は現実であり事実ということになる、そしてそれは、俺の腕が…本来ならばありえない体色…緑色になっているということが確かである、ということに他ならない。 暢気な心などもはや跡形も無く、ただ焦り、俺はもう片方の腕も、そして…足、腹、胸、おおよそ自分で目視できる範囲全てを確認した…が。 結果は分かりきっていた、自分で確認できる範囲…いや、変に希望をもったままでいるのは馬鹿らしいか、そう、おそらく、俺は全身が緑色というおかしな状況に置かれていた。 ついでに言えば、なぜか上半身裸の上、下半身にはボロボロの腰布…と言うのだろうか、間違っても衣類とはいえない粗末なものを着ているだけ…というこちらも正常とは言いがたい状況だった。 (なんだ、これは!?一体、これは!?) そして、気づいた。 おそらくは、身体が緑色で服装がほぼ裸ということをも飲み込むほどに大きな違和感が、事実が、嫌な予感と共に、ジワジワと、俺の思考に絡み付いていく。 (声が…でない!?) 口をあけている感覚は在るにもかかわらず、発声の意思があるにも関わらず、俺の耳に、本来ならば届くはずの声がまったく聞こえてこない。 ぐるぐると変わる状況に頭がパンクしそうになり、起こしかけた上体を倒し、空を見上げたまま、右腕を頭に載せ、深く、深く、息を吸い、ゆっくりと、吸った息をそのまま吐いていく。 (ふぅ…OK…落ち着いた、まずはもう一度確認だ、両腕、両足、腹、胸…うん、緑だ、間違いない、そして半裸、なんだこれ…次、声…でない、か、なんでだ…?いやまて、そうだ) 深呼吸で幾分か落ち着いた頭で、再度全身を見渡し声が出ないことを再確認した後、ピエロ野郎のぶち込んだのであろう知識、それに気づいた。 簡潔にまとめると、俺の置かれている状況は至ってシンプルなもののようだ。 冷静になるまえにこの知識に気づいていればおそらく発狂寸前程度には追い込まれるであろう程に反吐がでるものだったが。
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